『マチベン』感想文 ― 2006/04/25
かっこいい女、かわいい男
世は弁護士ブーム。バラエティや報道、ワイドショーなんかの番組には、有名弁護士がゲストやレギュラーで出演し、この4月からは民放NHKを含め、弁護士を題材にしたドラマが3本も始まった。前から法廷物はわりと好きで、推理あるなしに関わらず好んで見ることが多かったが、今回興味がわいたのは、NHKの「マチベン」とTBS系の「弁護士のクズ」。 アサヒ系の「七人の女弁護士」は、7人もの美人(ひとり美人とは言えないのがいるが)弁護士という設定がまず明らかに嘘くさいので最初からあまり興味はなかった。ところが、「弁護士のクズ」は裏番組で「きよしとこの夜」があるので視聴を断念。 主演豊川悦司ということで、結構見たかったんだけど、今更ビデオテープに録画する気にはなれなかったので断念した。HDD録画に慣れちゃうとマズいね…。ちなみにもちろん「きよしとこの夜」はHDD録画している。こちらはトーンダウンしちゃってちと悲しいのだけれどTT
さて、残ったのは「マチベン」。江角マキコ主演、井上由美子脚本の、マチベン=町の弁護士、つまり紹介者不要、手付金なしの成功報酬しかもらわないという、一般庶民にとって一番身近な弁護士を扱ったドラマである。井上由美子を調べてみたところ、何とあの松嶋菜奈子を世に送り出した、朝の連続テレビドラマ「ひまわり」でも、弁護士を扱ったドラマを手がけているみたいね。今回のドラマは、あの江角が颯爽と、キレのいいBGMに乗って、依頼者や同僚達と信念を戦わせながら、真実を探っていく、見ていて非常に爽快感のあるドラマとなっている。特に江角が素晴らしい。リアルの江角はバツイチで、今は2人目の夫との間に1人の子供がいるようだが、このマチベンでは、結婚しない女の理想的な女性像として描かれている。ドラマ自体は弁護士事務所と法廷、そして事件に関係する現場くらいしか出て来ないのだが、確か第1話で私は結婚もしてないし子供もいないと言っていたので、ずっと独身という設定なのだろう。 さすがの江角も40の峠を超え、美貌にはいささか陰りがあるが、そのキレはまだ失われていない。というか、正直彼女の顔の造作を美しいと思ったことはない。整ってはいるが、美人とは思わない。ましてや可愛いとも思わない。彼女の顔だちには華がないのだ。彼女から感じられるのは、花の微妙な色合いや曲線が描き出す美しさではなく、シンプルでスタイリッシュでクリーンな、まるでエアコンの効いた都会の新しいオフィスビルのようなキレイさなのだ。そのキレイな顔立ちと、今回の主役の勝気に真実を求め、信念を貫くという性格設定があいまって、今回の江角はかなりかっこいい。
女性をかっこいいと思えるのは、男をかわいいと思えるよりずっと稀である。どんなキャリアウーマンでも、大抵ドロドロとした私生活を抱えているもの。結婚していれば家族が重荷としてのしかかるし、独身なら男に翻弄されていたり、逆に男に相手にされないと寂しさを感じたりとか、特に独身女性への世間の風当たりは、独身男性よりずっと強い。「いきおくれ」「いかずごけ」という言葉は、女には使うけど男には使わないよね。男で独身の場合、なんていうんだろうか。ま、ともかく、このドラマの江角には、そういったどろどろした部分が微塵も感じられないのだ。肩で風を切って刑務所の高い塀を横に足早に歩く彼女は、まさにあえて結婚という選択肢を選ばなかった女性の象徴的な姿だ。唯一彼女が女性であると示しているセミロングの髪が、なびいたり頬にかかったりする様は、まるで戦いに赴く女神のようである。
それから、彼女に憧れて、有名弁護士事務所を退職してまで、彼女の所属する弱小事務所にやってきた弁護士を、最近では「新選組!」の土方歳三役で大好評を博した山本耕治が演じている。ハーバード大卒のエリートコースを進む弁護士だったが、ある事件をきっかけに彼女と知り合い、彼女の熱意や事件に対する姿勢に感銘を受け、自分の進む道に疑問を抱き、マチベンの扉をたたいたというわけ。彼女の一回りも年下である。こちらは、何の不自由もなく育った才能のあるイケメン男性が、自分の人生の中にはなかった何か熱いモノに出会ったのをきっかけに、自分の人生の転機を向かえるという感じだが、これがかわいいよね。蝶よ花よと育てられた箱入り娘の男性版のような人物が、器用に生きる道を捨て、ようやく自我に目覚め始めたという感じ。彼にも信念がないわけではないが、何かこう、人生経験に裏打ちされていない、嘘くさいものを感じてしまうのだが、これが一体彼女と知り合いマチベンを体験していくことにより、どう変化していくのか見物である。
このドラマ、6回シリーズですでに3回放映を終えているが、今までのところすべて単発の事件物だったので、これから見ても充分わかるだろう。ただ、番組のオープニングに、主人公の彼女自身が被告として法廷に立っているところや、彼女が検事だった時代に刑務所に送ったと見られる竜雷太演じる老人と接見し、彼女が彼に「本当のことを話して下さい」と言っているシーンがあったりして、底には1本の連続ドラマが隠されている感じがするが、まだそのくらいしかわかっていない。ともかくマチベンは、この春に始まった弁護士ドラマの中でもイチオシである。独身女性にはぜひ見てほしい。
世は弁護士ブーム。バラエティや報道、ワイドショーなんかの番組には、有名弁護士がゲストやレギュラーで出演し、この4月からは民放NHKを含め、弁護士を題材にしたドラマが3本も始まった。前から法廷物はわりと好きで、推理あるなしに関わらず好んで見ることが多かったが、今回興味がわいたのは、NHKの「マチベン」とTBS系の「弁護士のクズ」。 アサヒ系の「七人の女弁護士」は、7人もの美人(ひとり美人とは言えないのがいるが)弁護士という設定がまず明らかに嘘くさいので最初からあまり興味はなかった。ところが、「弁護士のクズ」は裏番組で「きよしとこの夜」があるので視聴を断念。 主演豊川悦司ということで、結構見たかったんだけど、今更ビデオテープに録画する気にはなれなかったので断念した。HDD録画に慣れちゃうとマズいね…。ちなみにもちろん「きよしとこの夜」はHDD録画している。こちらはトーンダウンしちゃってちと悲しいのだけれどTT
さて、残ったのは「マチベン」。江角マキコ主演、井上由美子脚本の、マチベン=町の弁護士、つまり紹介者不要、手付金なしの成功報酬しかもらわないという、一般庶民にとって一番身近な弁護士を扱ったドラマである。井上由美子を調べてみたところ、何とあの松嶋菜奈子を世に送り出した、朝の連続テレビドラマ「ひまわり」でも、弁護士を扱ったドラマを手がけているみたいね。今回のドラマは、あの江角が颯爽と、キレのいいBGMに乗って、依頼者や同僚達と信念を戦わせながら、真実を探っていく、見ていて非常に爽快感のあるドラマとなっている。特に江角が素晴らしい。リアルの江角はバツイチで、今は2人目の夫との間に1人の子供がいるようだが、このマチベンでは、結婚しない女の理想的な女性像として描かれている。ドラマ自体は弁護士事務所と法廷、そして事件に関係する現場くらいしか出て来ないのだが、確か第1話で私は結婚もしてないし子供もいないと言っていたので、ずっと独身という設定なのだろう。 さすがの江角も40の峠を超え、美貌にはいささか陰りがあるが、そのキレはまだ失われていない。というか、正直彼女の顔の造作を美しいと思ったことはない。整ってはいるが、美人とは思わない。ましてや可愛いとも思わない。彼女の顔だちには華がないのだ。彼女から感じられるのは、花の微妙な色合いや曲線が描き出す美しさではなく、シンプルでスタイリッシュでクリーンな、まるでエアコンの効いた都会の新しいオフィスビルのようなキレイさなのだ。そのキレイな顔立ちと、今回の主役の勝気に真実を求め、信念を貫くという性格設定があいまって、今回の江角はかなりかっこいい。
女性をかっこいいと思えるのは、男をかわいいと思えるよりずっと稀である。どんなキャリアウーマンでも、大抵ドロドロとした私生活を抱えているもの。結婚していれば家族が重荷としてのしかかるし、独身なら男に翻弄されていたり、逆に男に相手にされないと寂しさを感じたりとか、特に独身女性への世間の風当たりは、独身男性よりずっと強い。「いきおくれ」「いかずごけ」という言葉は、女には使うけど男には使わないよね。男で独身の場合、なんていうんだろうか。ま、ともかく、このドラマの江角には、そういったどろどろした部分が微塵も感じられないのだ。肩で風を切って刑務所の高い塀を横に足早に歩く彼女は、まさにあえて結婚という選択肢を選ばなかった女性の象徴的な姿だ。唯一彼女が女性であると示しているセミロングの髪が、なびいたり頬にかかったりする様は、まるで戦いに赴く女神のようである。
それから、彼女に憧れて、有名弁護士事務所を退職してまで、彼女の所属する弱小事務所にやってきた弁護士を、最近では「新選組!」の土方歳三役で大好評を博した山本耕治が演じている。ハーバード大卒のエリートコースを進む弁護士だったが、ある事件をきっかけに彼女と知り合い、彼女の熱意や事件に対する姿勢に感銘を受け、自分の進む道に疑問を抱き、マチベンの扉をたたいたというわけ。彼女の一回りも年下である。こちらは、何の不自由もなく育った才能のあるイケメン男性が、自分の人生の中にはなかった何か熱いモノに出会ったのをきっかけに、自分の人生の転機を向かえるという感じだが、これがかわいいよね。蝶よ花よと育てられた箱入り娘の男性版のような人物が、器用に生きる道を捨て、ようやく自我に目覚め始めたという感じ。彼にも信念がないわけではないが、何かこう、人生経験に裏打ちされていない、嘘くさいものを感じてしまうのだが、これが一体彼女と知り合いマチベンを体験していくことにより、どう変化していくのか見物である。
このドラマ、6回シリーズですでに3回放映を終えているが、今までのところすべて単発の事件物だったので、これから見ても充分わかるだろう。ただ、番組のオープニングに、主人公の彼女自身が被告として法廷に立っているところや、彼女が検事だった時代に刑務所に送ったと見られる竜雷太演じる老人と接見し、彼女が彼に「本当のことを話して下さい」と言っているシーンがあったりして、底には1本の連続ドラマが隠されている感じがするが、まだそのくらいしかわかっていない。ともかくマチベンは、この春に始まった弁護士ドラマの中でもイチオシである。独身女性にはぜひ見てほしい。
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